熊本インターハイ観戦記〜EYES ON by Hirokon

インターハイにもしも脚本があると仮定したなら、上手く演じられた人、気負いすぎて空回り
してしまった人など、様々なドラマを見せてもらったそんな3日間でした。

8/3(金)
朝の9:00に家を出て、乗り継ぎを繰り返し、熊本の運動公園競技塲に到着したのは14:30
を過ぎた頃。プログラムを購入してスタンドに入った時、ちょうど男子の5000mWの予選が開
始された所でした。陸上ファンといっても、今まで見た事の無かった競技なので、最初は”暑
そうだなあ”って程度の感想しか持てなかったのに、3500mから4000mを過ぎたあたりから、
トップ集団と後続の差が開いて周回遅れの選手が出始めると、自分でも驚いたのですが泣
いてしまいました。あの、炎天下の中、5000mの距離を走る事なく、ただ一秒でも速くと歩い
ている高校生たち。競歩特有のスタイルを見ていると、練習の厳しさというか、苛酷さは想像
を超えるものが有るのではと思ってしまいました。

予選一組でトップだった、福島・会津高校の小林くんは、東北大会でも好成績を出した注目
選手の一人でした。予想どおり、前半から積極的に前に出て、終始リードを保ち決勝進出を
決めました。実力のある選手とは言え、暑い熊本でよく力を発揮出来たと思います。
予選の二組はJr.記録保持者で優勝候補筆頭の長野・松川の高田くんの登場。高校性で唯
一19分台を出した、有力選手です。もちろん、タイム的には押さえ気味の22分06秒台ながら、
余裕のトップでした。この組には駅伝で個人的になじみのある秋田工の斎藤くんが出場して
いたので、面識は無いのですが、ずっと声援を送りました。結果は予選3位通過。幸先いい!

ただ、今回は正面スタンド付近に座ったので、投てきやジャンプ競技はなかなか、集中して見
れずじまいでした。

時間は経過して、1500mの決勝。女子の池田恵美さんが、高校新を出す瞬間に立ち会えま
した。ラスト一周の半分当たりまで青森山田のフエリスタ・ワボイさんに先行されていたと思う
のですが、最後のコーナーを廻ったあたりから、ものすごい歓声の中、池田さんがそれまで
貯めていた力を出し切るかのように、一歩前に出てそのままゴールになだれ込みました。
実力者同士の競り合いが高校新樹立につながったのかな?と思います。

男子の1500mはさすがのカビルくんでしたね。3分43秒29の大会新で堂々のV。もしかして、
と予想していた田子くんは3位で5000mにも出場の大牟田、村上孝一くんが2秒差で日本人
トップに!翌日の5000mの予選に期待がかかりました。予選4組で一位の広島・世羅の村上
勇一くんは11位、同じく2位の福島・田村の村上康則くんは8位。初日はここまで。宿泊の関
係で博多まで帰らなくてはいけない私は競技場を後にしました。

8/4(土)
この日は、前日の記録の記入に時間を取られてしまい観戦した競技は意外と少なめでした。
男子800m予選、8組まであった中で印象深かったのは、やはり優勝候補の鳥取・由良育英
の田子くんと、個人的に注目していた岡山・倉敷南の日笠くん、それに地元同然の福岡・八女
の山口恭平くんの予選一位の選手たち。特に、山口くんは”ヤマキョウ”の愛称で大人気でし
た。いつもながら、高校生たちの応援合戦の可愛い事。あの声が届くと本当にパワーがつき
そうな気がします。

400Hの女子の決勝、埼玉・埼玉栄の安樂さんと神奈川・横浜雙葉の江口さんの二人の激突!
実は、学校別でも女子の部、この2校がトップ争いをしていました。地区予選の記録では、安樂
さんの方が江口さんを上回っていたようでしたが、決勝ではほんの一秒弱の差で3年の江口さ
んが、2年の安樂さんを押さえて優勝を決めました。表彰式では、家族を見つけてずっとニコニ
コしていた安樂さんと対照的に、江口さんは泣きっぱなし。安樂さんに肩を抱かれて慰められて、
見ていて微笑ましいというか、何だか可愛い光景でした。

男子の400Hは、4位までが51秒台と大接戦、その中でこの競技を制したのは、島根・安来の
荒川勇希くんでした。ジュニア選手権のチャンピオンは、しっかりとインタハイでも実力を発揮。
ゴールした後のガッツポーズがほんとに嬉しそうで、爽やかな印象をもちました。表彰式でも、
もう満面の笑みで清々しさがいっぱい!

そして、再び涙が押さえきれなかった男子5000mWの決勝。8/4の新聞に「競歩の歩型違反
は一発失格」という記事が載っていました。これまでは、3度の警告で失格となっていたものが、
ゴール前での明らかな歩型違反は即時失格となるとの内容です。適用範囲はレース終盤から
ゴールまで。ただ、このルールが適用されるのは、3日からの世界選手権からとあったので、こ
のインタハイではどう判断されたのか分かりませんが。

レースが始まって予想通り本命の高田くんが先行していました。続いて、予選上位突破者の
会津の小林くんと埼玉・鳩山の大越くん、それに負けまいと秋田工の斎藤くん。この4人で、
先頭グループが出来上がり、そのまま終盤まで後続との差が開いたままだったので、斎藤
くんは4位?と思いながら見ていると、ゴールした高田くんの後一人おいて、あの暑い最中、
唯一帽子をかぶらないで競技をしていた斎藤くんが3位との場内アナウンス。オペラグラスを
覗きながらの観戦が災いして、小林君がいつレースから離れたのか気付かなかったのです。
なにしろ前日が競歩観戦の初体験だったので、何が起こったのか分からないまま、結果的に
は小林くんの他、2人が失格となっていました。スタンドの近くにいた人たちの話しを聞いてい
たら、トップの高田くんのスピードに思わず焦って歩型違反を取られたのではないかとの事。
確かに、高田くんの速さは群を抜いていましたから。あの時、小林くんはどんな思いでレース
を中断したのか、その心中は本人以外誰にも分からないけれど、この試練(と呼んでいいの
かどうか)を乗り越えて、これからもっと逞しく成長して欲しいと思います。この競歩は熊本IH
で一番、思い出深いレースになりました。

16:20、ついに男子5000mの予選開始。一組はカビルくんが当然のように飛ばして余裕のト
ップ。愛知・中京大中京の中尾くんは、苦しみながらも4位通過で、報徳の森本くんが10位
どまりだったのはちょっと予想外でした。二組は大牟田の大津くんが前半から積極的に入っ
たのですが、後半熊本・千原台の増山くんたち3人に置いていかれて結局4位に留まりました。
何か、暑さ以外に原因があったのかやや不満の残る結果となりました。3位に入った愛知・
豊川工の鷲見くんはまだ、2年生。将来性大です。三組では、1500mで2位の村上孝一くん
がまさかの敗退。埼玉栄の佐藤拓也くんは序盤から苦しいレースで、1000m過ぎたあたり
から大きく集団から離されて、結果的に棄権したようでした。これだけの大きな大会になると、
何が起こるかわかりません、まったく。

8/5(日)
私にとって観戦最終日、3000mSCには秋田工の村上和春くんが出場するので、朝6時台の
特急で博多を出発。レースの前に一言激励したいと思って捜したのですが、会えずじまいで
時間になり、スタンドに向かいました。予選は大牟田の土橋くんと同じ一組、予選の記録で
も10位に入ってないし、この暑さでは苦しいだろうと予想していたのに、前半から終始トップ
グループについて積極的な走りを見せつけてくれて3位でゴールした時には、もう私の方が
信じられなくて半泣き状態。まさか、決勝進出なんて。東北地方の子だから不利だと思って
たけど、なかなか粘ってくれました。土橋くんは、もちろんトップ通過。二組では、広島・井口
の網岡くん、福島・田村の武者くん、三組では、千葉・流通経済大柏のサイラス.ジュイくん、
兵庫・西脇工の西くん、四組では、やっと三重・稲生の梅枝くん、西脇の宮崎くんなどが上位
通過しました。決勝も見たかった!

男子800m決勝を見て広島に帰る事にしました。”ヤマキョウ”コールの沸き起こる中、スタート
するとやっぱり飛び出したのは、大本命の田子くんと大声援を味方に力走の山口くんでした。
1500mで3位に終わった田子くんには、恐らく負けられないレースだったはず。全力疾走の勢
いで山口くんを一度も前に出させる事無く(多分)ゴールに駆け込みました。嬉しさのあまり、
しばらく地面に横たわったままだったけれど。昨年の国体チャンピオンの名に恥じない結果を
出せて良かった!
 
競技場では、発表された気温以上に暑く感じましたが、やっぱり画面を通してではなく、間近
で見るインターハイは感動!の一言でした。このパワー溢れる高校生たちの中から将来スー
パーアスリートが生まれる事を期待してます。

結果はこちら(全国高校総体のホームページ)