世界陸上(テレビ)観戦記〜by宗太郎峠

 今回の世界陸上も、無事終了しました。いろいろと見所あるレースが多かったです。私は、
 大会前は「全種目テレビ観戦」を目標にしてたのですが、何だかんだで、結局半分くらいし
 か観戦する事が出来ませんでした。見られた分だけの感想を書きたいと思います。

男子マラソン:
 世界陸上の口火を切るレース、優勝候補にはハヌーシ、タイス、アベラ、藤田選手などが
 挙げられていました。レースは、出入りの激しいペースでいかにもハードなレースでした。
 最後のアベラ選手とビウォット選手のスプリント勝負は、見ごたえがありましたね。

 日本勢では油谷選手の5位入賞が最高順位でした。油谷選手は、びわ湖のときみたいに
 持ち前のしぶとさで先頭集団によくついて行ったなと思います。素晴らしい走りでした。ま
 た森下選手が8位入賞、西田選手が9位、藤田選手が12位、高橋選手が26位という結
 果でした。森下選手と西田選手は、勝負どころで先頭集団からは離されてしまいましたが、
 最後まであきらめずによく粘ったと思います。藤田選手と高橋選手は、むしろ「あの状態で、
 よく完走できたな」という感じでした。完走できた事は素晴らしい事だと思いますが、私とし
 ては「出場しない勇気」が欲しかったな..と感じました。今回はたまたまアクシデントがな
 く走れましたが、まだ先がある選手ですし、ここで取り返しのつかないことになったら、何に
 もならないですし..。(私のような外野がとやかく言うようなことではないんですが)何はとも
 あれ、無事完走できた事にほっとしました。次はぜひ、完調で世界の舞台に挑んでもらいた
 いものです。日本勢の口火として、いいスタートが出来たのではないかと思います。

男子100m:
 予選で、朝原選手が10秒06の好タイムで準決勝進出を決めました。これは、ファイナリスト
 も夢ではないかも..。でも次の準決勝の組み分けを見て愕然としました。グリーン、ボルドン、
 ベイリー選手などと同組・・。この中で4着以内に入らなければいけないとは。キツイなぁ..。
 結局、準決勝で朝原選手は組7位で敗退してしまいました。ファイナリストの夢は、次に持ち
 越しということになりました。さて決勝は、大本命グリーン選手が先頭に立ち、このまま楽勝
 か..。と思っていたら、ラスト30mくらいで失速。「あれれれ・・」という間に、どんどんモンゴ
 メリー選手との差が詰まっていく。ゴールまでは何とか粘りきったが「どうしたんだろう?」と見
 ていると、グリーン選手が、足を引きずっている..。すごいレースでした。でもこれでグリーン
 選手は200mとリレーは出られそうも無いようです。優勝争いがまた混戦になりそうです。

男子400m:
 男子400mは、日本勢の活躍を結構期待していたのですが、田端、山村、小坂田各選手は
 皆予選落ちしてしまいました。世界の大舞台で力を出し切るのは、いかに難しいか..という
 ことを改めて感じました。

男子ハンマー投げ:
 おそらく日本人が一番期待していた種目。その期待されている室伏選手、予選は10位で通
 過。まあ、シドニーの時のような最悪の事態は避けられてよかった..本番に期待しよう。
 そして決勝、室伏選手が2投目で82m46の大投擲を見せる。3投目、4投目とそのラインに
 近づく選手は現れない。「これはいけるかも..」と思っていた矢先、ジオルコフスキー選手が
 5投目で83m38の大投擲..。室伏選手は5投目、6投目と82m台を出すも残念ながらそ
 の記録には届きませんでした。もちろん銀メダルという結果も素晴らしかったですが、一番「
 すごい!」と思わされたのは、その投擲の内容です。何しろ、6投中5投が80mオーバーで(
 もう1投も79m台)、ファールは一回もなし。卓越した技術力があればこそ、これだけ安定した
 投擲が出来るのでしょう。また室伏選手は、他選手よりも体重が20kg近く少ないです。ハン
 マーの遠心力を支えるには、これはかなり不利ですよね..。それを補って余りある室伏選手
 の技術力、素晴らしかったです。銀メダル、おめでとうございます!

男子400H:
 為末選手、1次、2次、準決勝と突破して決勝進出を決めました。しかも準決勝は日本新記
 録のおまけ付き。決勝は、「力を出し切ってくれればそれだけで十分」と思っていましたし、
 正直、メダルまでは期待していませんでした。ところが決勝でも為末選手、素晴らしい走り
 でしたね。スタートから積極的な走りで、9台目のハードルを越えてもまだ先頭。最後はバ
 テて抜かれてしまいましたが、それでも最後、もう一伸びしましたね。日本新記録(初の47
 秒台)を更新して、初の銅メダル受賞となりました。しかも、スタミナさえつけばまだまだ記
 録が伸ばせそうな走りでした。次の大会では、一番上を目指してほしいです。本当に、おめ
 でとうございました。

男子1500m:
 エルゲルージ選手、強い勝ち方でしたね。1500mではもはや「敵なし」ですね。この後は、
 いよいよ5000m戦線に「殴り込み」をかけるみたいですし、5000mの距離で、あのスピー
 ドがどこまで生かされるか、たいへん興味深いです。

男子10000m:
 予選なしの決勝一発勝負で行われました。(永田選手の欠場は、残念でした)このレース、
 とにかく各選手間の「駆け引き」が凄まじく、乱ペースの展開になりました。特にケニア、エ
 チオピア、モロッコ勢の駆け引きは凄く、まさに「意地の張り合い」を見ているようでした。見
 ていても、その凄まじさに痺れましたね。これが世界の走りなのかと。結局、ゲブラセルシエ
 選手は3着に敗れ、ケニアのカマティ選手が優勝しました。日本の高岡選手、三代選手とも
 積極的な走りで、良かったと思います。順位こそ15位と22位でしたが高岡選手は一時先頭
 に立ちましたし、三代選手も前半、かなり前のほうでレースをしていました。この乱ペースの
 中では、後半バテてしまうのも仕方なかったのかもしれません。

男子4×100mR
 予選からキューバ、英国が失格となる予想外の展開(アメリカも危なかった)。その中で日本
 は、順調に決勝まで進出しました。そして決勝。中盤までまずまずの位置でバトンをつないで
 いきましたが、第4走へリレーする直前、3走藤本選手の動きがなんかおかしい。そのときは
 「故障したか?」と思いました。結局、朝原選手の猛烈な追い上げも及ばず、5位にとどまりま
 した。その後ビデオが流れて、2レーンの選手の腕が藤本選手に「直撃」していました。これは
 選手にとっても悔やみきれない結果になってしまいましたね。残念ながら「運がなかった」とし
 か言いようがないです。でも、メダルも十分射程圏内と言うことが分かっただけでも、収穫は大
 きかったと思います。(キューバ、英国はいなかったが)まだ若いチームですし、次に期待した
 いですね。しかしアメリカは、グリーン抜きでも強かった..。

男子4×400mR:
 この種目も期待していたのですが、日本はあえなく予選落ちしました。ちょっと、残念な結果で
 した。

女子200m:
 マリオン・ジョーンズが貫禄勝ちしました。100mで負けてしまったので、「調子が悪いのかな
 ?」と思っていましたが、このレースでは強さを見せてくれましたね。

女子5000m:
 岡本選手が予選に出場し、惜しくも予選落ちでしたが、自己ベストのタイムをマークしました。
 大健闘だったと思います。さて決勝は、レース前から「エゴロワVSサボー」のような感じで放
 送してましたが(いろんな意味で)、優勝はエゴロワ選手。サボー選手は8位という結果でした。
 でも「薬物疑惑」の渦中とはいえ、あのスタジアムの雰囲気の悪さは、どうしたものか..。結
 局、エゴロワ選手のウイニングランもなし。後味の悪い結末となりました。こういう事になってし
 まって、残念ですね。
 
女子マラソン:
 レースは、ルーマニアのディタ選手が一人飛びだす展開となったが、30q過ぎで2位集団が
 ディタ選手を吸収する展開となりました。このレースも、スローペースながらかなりハードなス
 タミナ勝負となり、シモン選手が優勝、土佐選手は2位に入りました。シモン選手がようやく
 掴んだ初めての金メダルに、私も嬉しくなりました。最後までスタミナも十分で、実力通りの
 強い勝ち方だったです。土佐選手は銀メダルでしたが、積極的かつ粘り強い走りで、力は十
 二分に出し切れたのではないでしょうか。銀メダル、おめでとうございます。渋井選手も4位
 入賞、体調不良がささやかれる中、ここまで粘れるとは、潜在能力の高さは相当なものなの
 でしょうね。こちらもぜひ、完調の時の走りを見たい気がします。あと、松尾選手が9位、松岡
 選手が22位、大南選手が37位という結果でした。どの選手も、ハードなコース、展開に苦し
 んだみたいです。(松尾選手は、後半よく追い上げていたらしいですが、何しろ遅れてからは
 テレビにあまり映っていなかったから..よくは分かりません)

その他の競技(気付いた点をいくつか。)
 男子20q競歩:
  柳沢選手が見事、7位入賞を果たしました。一時期の日本選手の成績から考えると、これ
  は「快挙」といえるのではないでしょうか。しかし..最後まで「中継」はなかったですね。ぜ
  ひこのレースを見たかったのですが..残念です。

  女子10000m:
   結局、見られずじまいでした。日本勢は岡本選手が9位、野口選手が13位、小崎選手が
  19位という結果でした。エチオピア勢が上位独占した模様。強かったですね。

  女子走り幅跳び:
  池田久美子選手が、見事決勝進出の快挙を成し遂げました(41年ぶりだそうです)
  Oさん、名前くらい覚えておきましょう。(苦笑)

 今大会は、記録的には低調でしたが、五輪直後の世界選手権としてはこんなものなのかも
 しれませんね。2年後の世界選手権、3年後の五輪の時には、勢力図がどのくらい変わって
 いるのでしょうか。かなり変動しそうな気がします。

 日本勢は、全体としては好成績だったのではないでしょうか。室伏選手や為末選手、男女マ
 ラソン勢はもちろん、特に男子短距離勢なども好成績だったと思います。反対に、男子400m
 勢や室伏、池田選手以外のフィールド勢がちょっと元気が無かったですね。

 それから、今回、私が一番印象に残ったシーンは為末選手の銅メダル獲得のシーンでしたね。
 ゴールした瞬間、心の底から感動しました。

 最後になりましたが、出場された選手のみなさま、お疲れさまでした。力を十二分に発揮でき
 た選手も、残念ながら力を出し切れなかった選手も、この大会が、今後の陸上競技生活にお
 いて、いい経験になることを祈ります。